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医師のエゴは悪いもの?

    6月にSDMの記事を書いた際に別で書きたいことがあったので今回はその話題です。

    タイトルの『エゴ』ですが、哲学的な話ではなく一般的な自分本位とかそういうニュアンスのエゴです。
    この話がSDMとどのような関係があるのかと思われるかもしれませんが、SDMの説明の際に紹介したパターナリズムという概念、これはまさに医師のエゴでもあると思います。パターナリズムは医師の「こうするほうがいい、こうすべきだ」という考えから患者さんへの医療を提供するものだからです。今回はこういった意味でのエゴについてのお話です。

    このパターナリズムは時代の流れとともにSDMへと変化してきたわけですが、6月の記事で書いたように必ずしもパターナリズムが悪だと私は思っていません。そもそも「こうすべきだ」という考えもその医師の中には「患者さんのために」というのが根底にあるはずだからです。とはいえ、ある意味でありがた迷惑とも言えるものになってしまう場合もあり、現代ではどちらかと言えばその傾向が強いのでパターナリズムよりSDMが推奨されているのでしょう。エゴはエゴでも本当に自分本位だけになってはいけないということですね。

    誤解のないように書いておくと、私自身はあまりエゴを出さないように心がけています。理由はいくつかありますが、ひとつは患者さん自身や家族の希望や考えが最も大事で、それを私のエゴで邪魔するべきではないと考えるからです。
    昔、研修医の頃に先輩医師に教えてもらった「医者は患者の考えを操ることもできるので、よくよく注意するように」という言葉をよく覚えています。医師が病気や治療について説明する際に、同じ内容でも言葉のニュアンスなどで患者さんに「こっちの治療の方がいいな」と(医師が意識せずとも)思わせてしまう場合があるという意味です。
    原則的には医師は医学という科学に基づいて医療を提供するべきなので、説明の際になるべく公正で客観的な説明をするように注意しています。ただ確実なものとしては断言できないけれど、これまでの医師としての経験などから私見でも伝えた方がいいと思う情報は、私見であることをも含めて伝えるようにしています。そういうところは少し私のエゴな部分なのかもしれません。

    ただ説明を聞いた患者さんがどういう選択をするか決めきれないことが当然あります。医学的にもどちらが優れた選択というのがない時も多々ありますし、そうであればなおさら決めるのが難しくなるのはよくわかります。そういった場合には、「自分ならどうするか」「こっちの方が個人的にはいいと思う」などの私自身の意見というものを伝えるようにしています。ただこれが良いのか悪いのかは正直自分でもわかりません。当然自分でも、こっちがおすすめですよ、ということで伝えているわけですが、自分の考えを押し付けるみたいで気が引ける部分もあります。かといって患者さんが悩んでいるのに、あくまで客観的な見解を伝えるだけなのは人の心がない感じもして、よりよい医療を提供したいという気持ちに反するようにも思います。
    そういうわけで、それこそ私のエゴで、悩んでいる患者さんに少しでもできることを、と思って自分の考えを伝えています。

    このあたりのさじ加減は難しいですね。もっとうまくできる先生もいると思いますが、少しでもよりよい医療を実現できるように考え続けながらやっていくしかないのかなと考えています。