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認知症とは何か(その1)
今回は認知症について書いてみようと思います。
 そもそも「認知症」とは何か、というところをテーマにしてみました。
 さて皆さんはどうお考えでしょうか?
 一般的には「記憶力が悪くなる」というようなイメージかなと思います。
 ドラマや映画などでもそのように描写されることが多いですし、「物忘れが多いんですが大丈夫でしょうか?」と患者さんに相談されることも多いです。
 ただ厳密にはやや違って、もし記憶力だけの問題ならば認知症ではなく「記憶障害」という病名でいいはずです。
 認知症とは簡単には「何らかの原因で認知機能が障害される症候群」と定義されます。
 ここでいう「認知機能」のひとつに「記憶力」があるのです。
 では他に何が「認知機能」とされているかというと、思考、理解、学習、言語、判断、見当識(時間や場所を把握すること)などが含まれています。
 なので実際には記憶力はある程度保たれている認知症の患者さんもおられますし、これらの様々な要素に障害があることがほとんどで、記憶力だけ障害されているということは少ないです。
もう少し深く考えてみましょう。
 このような「認知機能」が障害されるとどういった症状が出るでしょうか。
 記憶力であれば単純に物忘れ、ということになります。
 思考や理解では難しいこと(契約関係などの複雑な話)がわかりにくくなります。
 学習や言語では新しいことを身につけづらかったり、言いたいことがうまく表現できなくなったりします。
 見当識では夜なのに朝だと思ったり、家にいるのに家じゃないと思ったりしてしまいます。
 もちろんこのようにすべてが1対1の関係ではなく、“メインとなる機能としては”ということで、認知機能全般の低下によって複合的にこういった症状が出るようになります。
こうして考えてみると自ずと認知症の症状に対して理解というか納得できる部分もあるのではないでしょうか。
 例えば徘徊などは朝か夜か、家なのかそうじゃないのかがわからなくなって、どうすればいいのかわからず出歩いてしまうということですし、怒りやすくなる(易怒性といいます)のは自分ではうまく言葉にできなかったり、話されている内容が理解できなかったり、そういうことがあってイライラしてしまう(もちろん他の要因でイライラしていることも多いです)ということです。
理屈がわかっても周りの人にとって困るのは変わらないでしょうが、そういう背景がわかった上で対処するのとわからず対処するのではご家族さんの心理的負担は違うんじゃないかなと思うので今回このような記事にしてみました。
 次回はこの続きで私の個人的な見解というか、こう考えると認知症を持つ患者さんのご家族にとっていいんじゃないかなという話を書いてみたいと思っています。