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高血圧を治療する理由

    以前のブログの通り病気についての情報を書こうと思いますが、今回は高血圧についてです。
    厳密には病気としての名前は「高血圧症」となるのですが、一般的な言葉としてここでは高血圧でお話します。
    また色々書きたいのですが、全部書くと長くなってしまうので内容は絞りました(それでも長いですが)。知りたい情報がなかった場合はすみません。また追加でブログに書くこともあると思うのでその機会にと思います。

    ということで今回は「なぜ高血圧は治療しないといけないのか」について書いてみます。

    そもそも高血圧の方でも大半は高血圧自体に関しては無症状だと思います。
    無症状が大半なら別に困らないのだから治療しなくてもいいのでは?と思う方も多いでしょうし、事実、そういう考えで治療されてこなかった患者さんを何人もみたことがあります。それなのになぜ治療するのかというと、当然困ることがあるからです。
    それは端的に言えば動脈硬化の原因となるからです。
    動脈硬化の何が悪いかですが、これは治療が難しく命に関わる病気を引き起こす原因になっています。例えば、脳梗塞や心筋梗塞、心不全や腎不全などです。またこのような血管疾患はがんと並んで現在の日本での死因の多くを占めています。
    つまり『高血圧によって起こる動脈硬化は生死にかかわる多くの病気の原因となるから』が治療する理由です。

    こう書くと怖いですが安心してください。現在は高血圧に対して数多くの良い治療薬がありますし、何より高血圧自体はありふれた病気です。
    高血圧は日本の30代以上の人間の約半数がかかっているとされています。もちろん高齢になればなるほど増えるので30代で高血圧の人は男性で20%ほど、女性ではもっと少ないです。
    とはいえこの有病率はかなりなもので今は大丈夫だとしても私を含めてすべての人が人生のどこかのタイミングでなってもおかしくない病気ということです。

    動脈硬化について補足すると動脈硬化自体は自然に加齢でも起こってきますし、他にも糖尿病や高脂血症など別の理由でも進行が早まりますので、高血圧=動脈硬化、というわけではありません。
    ですが高血圧が動脈硬化に及ぼす影響は大きく、動脈硬化が進行すると硬い血管の中に血液を流すためにさらに高血圧になってしまうという悪循環が起こります。

    そんなわけでいずれなんらかの治療をしないといけないなら早いうちに治療を始めてしまう方が飲む薬も少なくて済みますし、大きな病気の心配も減ってより良いというわけです。

    また当院は在宅診療専門なので比較的高齢の方が多いですが、そういう方にもこれらの理屈が当てはまるのか、というのは気になる部分かもしれませんね。
    少し別の理由も含めてですが、おおむね当てはまります。
    もちろん高血圧によって進行する動脈硬化はそれ相応の月日をかけて進行していきます。
    なので若い人に比べれば高齢の方はそういった影響は少ないかもしれません。
    しかし高齢の方でも高血圧を治療している方が長生きできるという研究データが出ています。禁煙はどの時点で始めても効果があると言われていますが、似たようなものでしょう。
    若い人に比べれば効果は少ないのかもしれないけれど、やはり治療自体の効果はしっかりある、ということです。
    また上記に、別の理由も含めて、と書きましたが、それは心不全という要素です。
    心不全とは簡単に言えば心臓が疲れて動きが悪くなってしまうことを指しますが、当然年を重ねるほどそれだけ心臓は動き続けているので疲れやすくなってきます。現時点で症状がなくとも、です。
    そして高血圧とはそれだけ心臓が強く血液を送り出している状態なので心臓にかかる負担が大きくなります。これが続けばいずれ心臓が疲れてしまって心不全の症状が出てしまう、ということです。
    そういう要素も含めて高齢の方でも高血圧は治療した方がいいと言えるでしょう。

    具体的な血圧の数値目標などは個人の状況によりますし、高血圧の原因がなにかという要素もあるのでかかりつけの先生と相談してもらうのが一番ですが、以上のような理由で自覚症状がなくとも、むしろ自覚症状がないうちに、高血圧の治療を開始するほうがいいですよ、というお話でした。