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塩分と血圧の関係

    以前に、高血圧は早めに治療した方がいいですよ、というお話を書きましたが、じゃあお薬以外に何かできることがあるのか、という部分も気になるかなと思い、よく言われる“塩分の摂りすぎで高血圧になる”ということについて書いてみます。

    先に答えを書くと塩分の摂りすぎで高血圧になりやすいというのは事実です。
    これは古くから多くの研究がされてきた内容でほぼ確定と言っていいでしょう。
    一部に相反する内容の研究結果もありますが、そこがこの論説をややこしくしている要素でもあります。というのもどんな人でも塩分を多く摂れば高血圧になりやすくなるのは事実ですが、どれくらいが摂りすぎなのかは多少個人差があるのです。また塩分以外にも様々な食生活の要素が高血圧に関係しています。わかりやすいものでいえば運動や睡眠、食事の中でも塩分以外の要素が関係しています。そんなわけで研究の規模(対象とする人数や観察する年数)が小さいと他の要素の影響が大きくなって別の結果が出ることもあります。
    つまり塩分の摂りすぎで高血圧になりやすいのは事実でも、その影響の強さというのが人による部分や他にも同じくらい影響する要素があるということです。

    じゃあ結局どうすればいいんですか、と言われそうですね。
    ここからは私の考えとしてですが、規則正しい食生活を心がけるように、とお伝えしています。
    考えてみて欲しいのですが、例えば塩分を1日5gまで(WHOの推奨する塩分摂取量ですが、日本人の食文化ではかなり気を使わないと厳しいでしょう)にしたとして、運動はしない、徹夜など不規則な睡眠、喫煙、飲酒をするなど他の部分で不健康な生活をして高血圧を予防できるかというとどうでしょう?おそらくあまり効果的ではないと思います。それならばなるべくでもいいから減塩を心がけつつ、適度な運動、しっかりした睡眠時間の確保、喫煙や飲酒も少なめに、などするほうがよほど効果的だと思います。
    人間の身体とはよくできているもので、その分多くの要素が複雑に絡み合っています。ひとつのこと(ここでは減塩ですが)をしたからといってすべて解決とはいきません。しかも健康にかかわるものは高血圧以外にも多くあります。であれば、わかりやすい健康的な生活をするのが一番効率的で実践しやすいということです。もちろんしっかり塩分制限できればより効果的ですが、少しでも減塩できればそれはしないより確実に良いのです。食生活とはそういうものの積み重ねなので、健康に向かう気持ちを持って生活するだけで数年、数十年後には大きな違いになると思います。

    補足的に具体的な塩分摂取量の推奨などについても書いておきます。
    上でも書いたようでWHOは1日5g未満を推奨していますが、日本人の平均摂取量は10g前後です(これも数十年前に比べればかなり減っています)。つまり世界基準に合わせるなら半分程度に減らさないといけないということですね。
    さすがにそれは現実的ではないということで厚生労働省では7g未満程度(正確には男性7.5g、女性6.5g未満です)を目標としています。加えて高血圧の治療ガイドラインではすでに高血圧を発症している方は6g未満が目標となっています。
    とはいえ以前も述べたように、高血圧の原因として動脈硬化があり、それを起こす病気には糖尿病や高脂血症など他の病気もあります。ですのでこういう他の病気の予防のことも考えると塩分以外にも食生活に気を付ける必要がありますし、もしすでに他の病気をお持ちならその病気自体の治療をしっかりすることが重要です。

    なかなか人間は頑張れる程度に限界があるので、すべてに気を付けてきっちりとはいかないと思います。何事も優先順位がありますので、どこを頑張るべきか悩んだ際にはかかりつけの先生に相談してもらうといいかなと思いますし、その先生も患者さんがどこに悩んでいるかなど知れた方がより良い治療ができると思うので気負わず相談することをお勧めします。