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シェアードディシジョンメイキング

    さて今回はタイトルの通りシェアードディシジョンメイキングというものについて書きたいと思います。
    といっても私も最近この言葉を知りました。まだまだ勉強不足ですね。
    長いカタカナですが、英語ではShared Decision Makingと書き、日本語では共同意思決定と言いSDMと略されたりもするようです。
    具体的な意味としては、患者さんと医師で相談しあって治療方針などを決定する、というようなものです。
    これは当たり前のような話ですが、意外とそうでもなくて、数十年前までは医師が治療方針を決めることが当たり前でした。それが少しずつ変化してきて今はSDMという考え方が標準になろうとしている、ということだと思います。
    詳しい話は「SDM 医療」などで検索してもらえると出てきますので興味のある方は検索してみてください。ここでは長くなってしまうのですべては説明できませんが、多くの説明では対比のためにSDMに加えてパターナリズム、インフォームドコンセントなどの用語が紹介されています。そこで今回の記事ではこれらの変遷を説明しつつSDMについて書いてみようと思います。

    まず歴史的流れでいうと昔はパターナリズムが主流でした。
    わかりやすく言えば医師が治療方針を決めるというもので、医師の勝手のような印象もあるかもしれませんが、そういうわけではなく、昔は医師が責任をもって最もよい治療を行っていく義務があるというような考えがあったからです。逆にこの頃の患者さんはすべて医師に任せておけばいいし、そうすべきというような考えがあったのだと思います。
    これはこれで全くの悪しき考えというわけではなく、医師とすれば最良の治療をしてあげたいという思いがあってのことですし、患者さんとすれば自分で何かを考えたり決めたりしなくていいというメリットもあるわけですが、時代が変わる中で個々人の権利が重要視されていくようになると、命や人生に関わることをすべて他人に任せてしまう、もしくは自分で決定できないことが問題視されるようになっていきました。
    そこで出てきた次の考え方がインフォームドコンセントです。
    これは治療の内容やリスクなどを患者さんも理解した上で同意して治療するというような考え方です。今となっては広く知られた考え方かと思います。
    そしてここから一歩さらに進んだ考え方がSDMです。
    インフォームドコンセントでは、ある治療に対して理解と同意を持って行うということでしたが、SDMでは様々な治療について理解してもらいその上でどの選択肢を取るかを医師と一緒に決めるということへと変化しています。これはそれだけ現代では治療の選択肢 (治療するかしないかも含めて)が多くなったというのも変化の理由の一つかと思います。

    現代的な考え方でありSDMが最も良い方法に思われるかもしれませんが、そうとも限りません。パターナリズムで書いたことの逆、つまりSDMでは患者さんも様々なことについて理解して考える必要があるからです。これは重要な決定であればあるほど負担になるでしょう。もちろんその負担を軽減することも医療者のSDMにおける役割ですが、やはり人によってはパターナリズム寄りで「お任せしたいです」とおっしゃる方もいます。

    こんな風に時代とともに医療における考え方も変化してきており、私たち医療者はもちろん患者さん側もその変化についていく必要がある難しい現代ですが、とはいえそのサポートもまた医療者の役割なのでその部分もお役に立てればと考えています。
    というわけで今回はSDMについて紹介してみました。

    ただ、当院では在宅医療という分野もあってか、元々こういった考えで患者さんに向き合ってきたように思います。なのでそういう意味ではこのSDMという考えや患者さんとの関わり方には一日の長があるのかなと少し自信を持っています。引き続き、こういった患者さんにとってより良い方法を模索していきたいですね。