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糖尿病ってなに?

    さて皆さんは糖尿病とはどんな病気だと思われているでしょうか?
    名前の通り尿に糖分が出る病気?それとも血糖値が上がる病気?
    いずれも間違いではないですし、血糖値が上がるのはとても重要な要素ですが、核心とは少し違います。
    この記事ではそのあたりを説明したいと思います。

    インスリン注射というのを聞いたことがある方もいるかもしれません。
    インスリンというのは人間の体内で唯一の血糖値(血液の中の糖分の濃度)を下げる作用のあるホルモンです。
    このインスリンが不足することが糖尿病の核心と言っていいと思います。
    なのでインスリン注射とは、足りないなら補えばいいじゃないか、ということでインスリンを注射で補ってあげようという治療です。
    話を戻すと糖尿病とは「インスリンが足りない→血糖値が上がる→色々な症状(尿に糖が出るなど)が出る」病気、ということです。

    ここでもう1つ重要な点があります。「インスリンが足りない」というのには2種類あって、もちろん「インスリンがあまり分泌されていない」というのがあるのですが、もうひとつ「インスリン自体は分泌しているのに効きが悪く血糖を下げるのには足りていない」というのがあります。
    要はインスリンそのものの不足とインスリンの効果の不足があるわけです。
    そして比較的多くの場合にはインスリンの効果不足の要素が中心になっています(完全にどちらかだけということはないですが)。
    なので最近の治療で中心となっているのは、インスリン注射というよりはインスリンの効きを良くしたり、別の方法で血糖値を下げてインスリンを増やさなくてもなんとかなるようにしたりといった治療です。注射というのはなかなか患者さんからするとハードルも高いですしね。

    さてインスリンの効果不足とはそもそもどういうことなのか、というのが気になりませんか?
    ここは現時点ですべて解明されているわけではありませんが、医学的にはインスリン抵抗性の増大(インスリンの効きにくさが上がっている)と表現したりします。
    インスリン抵抗性というのは様々な理由で上がってしまいます。
    例えば血糖値が高い状態が続くとそれ自体がインスリン抵抗性を上げます。こうなるとどんどん悪循環してしまうので早めに治療する方がいいわけです。
    他にも肥満や筋肉の減少でもインスリン抵抗性が上がります。

    ただ注意して欲しいのはこのインスリン抵抗性は遺伝的な要素で個人差がありますし、年齢とともに自然と上がってしまう人も多いということです。
    つまり糖尿病は必ずしも生活習慣によってのみ発症するわけではないのです。
    普通の生活(とても健康的な生活までいかずともそれほど不摂生なわけではない)をしている人でも糖尿病になるときはなります。そもそも人間自体が加齢とともにインスリンの分泌も落ちますし、筋肉も減りやすくなるので、糖尿病になりやすくなっていくものです。
    なので糖尿病になったからと言って過度に生活習慣に敏感にならなくてもいいと思います。
    もちろん糖尿病の治療には生活習慣の改善はとてもよい手段ですが、継続する必要があるので無理するべきではないですし、なにより過去の生活習慣を悔やむ必要はそれほどないと思います(もちろん明らかな不摂生が自覚されるのであれば改善すべきですが、患者さんを診ていてそういう人は意外と少ないですし、むしろ自分の生活習慣が悪かったのかと自分を過度に責めてしまう人が多い印象です)。

    というわけで、最後に少し脱線しましたが、今回は糖尿病について書いてみました。ありふれた病気ではありますが、病気の仕組みは結構複雑でなかなか理解するのは難しい病気です(そもそも体内で行われている血糖値のコントロール自体が複雑なものですので)。少しでも理解の助けになれれば幸いです。
    また次に糖尿病について書く際には治療などについて書こうと思います。