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老衰でないと自宅で最期をむかえるのは難しいのか

    この質問に額面通り答えるなら、もちろん老衰でなくとも自宅で最期をむかえることは十分可能ですし、実際当院でお看取りさせていただく患者さんは老衰以外の方が大半です。

    というお返事になるのですが、質問の意図というか、この質問をした人の考えていることを想像すると、きっと欲しい回答はそういうことではないのだろうと思います。
    つまり「難しい」の内容ですね。
    医学的な意味で自宅で最期をむかえるのが難しい病気というのがないわけではありませんが、ほとんどないと思ってもらってよいです。
    ただ患者さんやご家族の立場で見ると、病気によって自宅で過ごすことの負担が大きく変わるのは事実です。
    この点で老衰というのは自宅で最期まで過ごしやすい病気(老衰は厳密には病気ではないですが)と言えるでしょう。

    簡単に比較するために老衰とそれ以外の病気で比べてみます。
    医学的な面と心理的な面の二つが大きな違いになると思います。

    まずは医学的な面から。
    老衰とは過去のブログにも書きましたが、病気ではなく加齢による自然な変化なので、特別な治療というのがありません。少しでも長生きできるようにアドバイスやサポートはもちろんしますが、同様のことは老衰以外の病気でも行うのでその部分に差はありません。
    しかし通常の病気であればその病気に応じた治療があります。ということは治療をするのかどうか、またどのような治療をするのか、を決める必要があります。これが自宅で過ごすということに対しては難しくさせる部分でもあります。
    例えば病院でしかできない治療があるときに病院にいくという選択肢が生まれます。これを選択した結果、良い方向に行き元気になって自宅に戻ってくる方もいる一方で、治療の効果が乏しく病院で亡くなる方もいます。もちろんどの選択肢も間違いはなく患者さんや家族の選んだものが正解と言えますが、自宅で最期まで、という部分においては自宅で最期まで過ごさない場合が増えるということですね。

    次に心理的な面です。
    老衰は多くの場合、症状としてあまり劇的なものはなく患者さん自身も苦痛は少ないので、本人はもちろん家族も見守りやすいです。
    それにだいたいの状態変化が予想しやすいので心の準備がしやすく、また天寿を全うできるという意味で穏やかにその時に気持ちを向けられる患者さんや家族が多いです。
    一方、病気では症状が強い場合や急変のリスクがある場合があります。
    もちろん症状の緩和はしますが、どうしても変化は起きますし、急変のリスクについてはいつそうなるか予測しきれない場合もあります。そういった不安に対しては病院など24時間医師がいる場所の方が安心という方も多いです。また家族の目線では苦しむ患者さんを見守るという精神的な負担もあります。
    そういった精神的な負荷の大きい病気の場合、最終的には自宅ではなく病院で最期をむかえられる方が増えるように思います。

    こういった理由で老衰とそれ以外の病気とでは自宅で最期をむかえる難しさには差があると言えます。
    ただそれは老衰でないと自宅で最期をむかえられないということではもちろんありませんし、老衰の記事で書いたように高齢の患者さんの場合は老衰でなくとも経過としては老衰に近いような経過を辿る場合も多いです。
    また症状が強くとも当院も緩和治療を行いますし、急変のリスクなどを受け入れる必要があるものの、それでも自宅で、という思いのある方であれば医学的には全く問題なく自宅で最期まで過ごすことはできます。

    ここでは別のテーマの内容になるので詳しく書きませんが、可能不可能とそれが良いか悪いかは別の問題なので、自宅で過ごすことのいい部分と悪い部分、病院や施設で過ごすことのいい部分と悪い部分を考えた上でご自身にとってよりよい方を選ぶことが正解だと思います。
    そういった意思決定のサポートもまた在宅医療の一部なので悩まれた場合にはご相談いただければと思います。