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在宅での看取り
向原クリニックを開院してすぐの2010年12月に書いたブログを再掲します。
現在の社会状況では、まだ自宅で亡くなるという選択肢は一般的ではありません。しかし長い日本の歴史の中で、最近の昭和51年までは自宅での死亡率が病院での死亡率を上回っています。言いかえれば病院で亡くなるのが当たり前と思っているこの30~40年の方が特殊な状況ではないでしょうか?これから在宅での看取りも普通となる(理想的には自宅、病院、ホスピス、施設など自由に最期の場所を選択できる)時代が来ると思います。
そういう状況下なので年配の身内の方でも在宅看取りの現場を経験した人がいないため、当クリニックのような在宅支援診療所(緊急時24時間対応する訪問診療を行う診療所)の役割が大きいと思います。数時間前までしゃべっていた人が眠るように亡くなる、いわゆる大往生の方もたくさんおられますが、亡くなる数週間前より痛み、呼吸困難、呼吸苦、せん妄(言動や行動につじつまが合わない不穏行動)が生じることがあり、薬を使って症状コントロールする必要があります。症状コントロールをしながらご本人に住み慣れた自宅での生活を続けていただき、在宅で看取りを終えた後、家族に悲しい中でも最善の選択として喜んでいただけると思います。誤解を恐れずに言えば、在宅看取りを終えた家人は充実感を感じている方が多いように思います。それは最期の日々を思い出し、介護・看病が大変であったけれども自分たち家族の力でできるだけのことができたという思いからだと考えます。
10年以上経って上記ブログを読み返すと、「まだ自宅で亡くなるという選択肢は一般的ではありません」や「身内の方でも在宅看取りの現場を経験した人がいないため」などまだ在宅医療が当時は広く認知されていなかったことがよくわかります。令和になり現在では在宅ケアでの在宅看取りがメディアでも取り上げられ身近でも経験した方々が増え浸透してきたと思います。在宅看取りはあくまで選択肢の一つですので、希望される方に在宅看取りをサポートできればと思っています。