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がんの予後予測~緩和ケア病棟入院のタイミングはいつ?
がんの予後予測を年単位(数年)、月単位(数か月)、週単位(数週間)、日単位(数日)、時間単位(数時間)という言い方で表現することがあり、かなり幅を持った言い方です。言いかえるとこれぐらい幅を持った表現でしか人の寿命というものはわからないと言うことだと思います。私自身在宅看取りをしていますが、予後がどれくらいなのかははっきり言って本当にわかりません。看取りが近いと思っても小康状態になって頑張られる方もいますし、小康状態と思っていても急変される方もいるからです。しかし、家族の(心の)準備や亡くなる前にしたいことや会わせたい人がいる場合などのために、予後はある程度予測し家族にお伝えした方がよいと考えています。
それでは当クリニックで予後予測をどのようにしているかはおおよそ以下の通りです
年単位…癌が治癒もしくは進行していない状態。医学的には、化学療法などの効果判定が効果ありもしくは悪化なしの状態で、パフォーマンスステータス(PS~日常生活制限の程度指標)が1以上の状態。
月単位…癌は進行しているが、日常生活はほぼ自立していて食欲があり食事摂取ができている(もしくは高カロリー輸液で問題なく栄養が摂れている)状態。医学的には、化学療法などの効果判定が効果なく病状進行ありの状態(CTにて癌が増大、血液検査で腫瘍マーカーの増大、遠隔転移の出現・増大)で、PSが1~2程度。
週単位…日常生活に介助が必要になり、食欲が徐々に減っている状態。意識レベル低下が始まり傾眠傾向(呼びかけると返事可能だが呼びかけを止めるとすぐに寝入る状態)や血圧や酸素飽和度が下がる場合がある。医学的には、PSが急激に悪化する状態(2~4)。1番苦痛やしんどさが出やすい状態と考えます。
日単位…日常生活がほぼ全介助で食欲が全くなく食事摂取・嚥下がほとんどできない状態。初期で会話は可能。意識レベルは傾眠~昏睡(呼びかけに反応しない状態)。医学的には、PS4で意識レベルJCS10~100程度で血圧・酸素飽和度が低下し脈拍は亢進し呼吸が努力呼吸や不規則呼吸などが出現します。
時間単位…意識レベルは痛み刺激にも反応しないことが多い(深)昏睡状態。会話・意思疎通はできないことが多い。血圧・酸素飽和度はさらに低下し、下顎を動かす下顎呼吸や無呼吸が出現する状態です。解熱剤に反応しない38度以上の高熱がでる場合も多いです。医学的には意識レベル200~300です
それではいつ緩和ケア病棟に入院するかですが、個人的には予後週単位レベルのタイミングが良いと思います。具体的には個人差があり何とも言えませんが、指標としてはトイレに行くことができなくなるタイミングです。年単位・月単位ではほぼ問題なく自宅で生活できていますし、日単位や時間単位ではホスピスに入院するまでの移動が本人の負担になり、入院後の本人・家人が慣れる間もなく永眠されるように思うからです。少なくとも時間単位で入院することのメリットはないと考えます。しかし、ホスピス入院のタイミングは基本的に医療者側が決めるのではなく、①入院での症状コントロール希望時②介護の限界③在宅での本人家族の強い不安感など、本人・家人が入院希望をしたタイミングと考えます。