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「生物学的生命」と「尊厳ある生命」

    看取りの話が出た場合、在宅・入院にかかわらず本人・家人の希望は「痛み」「苦しみ」を取り除いてほしいということだと思います。当クリニックの在宅患者さまで終末期にそのような症状が出た場合、モルヒネ(鎮痛薬)やミダゾラム(鎮静薬)の持続皮下注射を行う場合があります。ここでは「生物学的生命」を心肺機能が維持されている状態(脳死の問題は保留にします)、「尊厳ある生命」を疼痛・苦悶がなく(本人・家族が許容範囲内)本人の意志が尊重された生活・身体状態とします。我々(在宅)緩和ケアの医師の役目は「生物学的生命」を短くすることなく「尊厳ある生命」を長く保つように投薬コントロールなどの在宅支援することですが、時には「生物学的生命」が短くなる可能性を認めながら「尊厳ある生命」を最大限保てるようにすることが必要と考えています。医師として「生物学的生命」が短くなることは苦渋の選択ですが、モルヒネやミダゾラムの量が不十分で痛んだり苦しんだりして逝かれる事態だけは避けたいと考えるからです。