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病気や薬についての知識を患者さんに伝える意義
タイトルはやや硬くなってしまいましたが、今回は患者さんになぜ病気や薬についてのことを説明するのか、というお話です。
私は診察時に基本的に病気によって体で起こることや症状の出る理由、薬の効く仕組みなどをなるべくわかりやすくお伝えするようにしています。
患者さんによっては治してくれればそれでいいからそんな話は面倒、と思う方もいるのかなと考えたりもしますが、総合的にみてもやはり説明はすべきだと思っています。
その理由をいくつか紹介したいと思います。
昔は治療というのは医師にお任せという考えが患者さんにも医療者にも一般的でした(難しい言葉ではパターナリズムといいます)。
しかし現代では、基本的には治療の様々な最終決定は患者さん自身が行い、それに必要な情報やアドバイスを医療者が行うという考えが広まっています。
このような時代的な変化に伴って様々な部分で変わっていく必要が出てきています。
例えば、昔の考えでは「よくわからないが医師に出された薬は指示通り飲んでいればいい」ということが、現代的な考えでは「~の病気のためにこの薬を飲んで治そう」とか「こういう部分に気を付けて生活しよう」と患者さんに思ってもらえるようになるのが理想です。
ここでそのように思ってもらうには、患者さんにもある程度の病気や薬に対する知識や理解が必要になるというのが理由のひとつです。
次に、間違った生活習慣や薬の飲み忘れなどを防いで正しい治療を行うためと、患者さんの不安を和らげるためです。
何事でもそうだと思いますが、何かを毎日行うときに理由がある・なしでは間違いやすさや忘れやすさは大きく違うでしょう。意味も分からず毎日これをしなさいと言われても、続けようというモチベーションは湧き辛いものです。
また、病気というのはそもそも人を不安にさせてしまうものだと思います。症状に対してもそうですし、将来の変化に対しても不安に思うことがあるでしょう。すべての不安をなくすことはできないかもしれませんが、漠然とした不安の一部はわからないことや知らないことが原因にあると思います。そういったときに病気や薬の知識があれば、ここに気を付けていれば悪化する心配はない、この薬を飲んでいるからこういった症状を防げる、などと思うことができ不安が減ると考えます。そしてその結果この治療を続けていけば安心だと思ってもらえれば、治療にとって重要な部分が習慣化していくと思います。
最後にもっとも単純なことですが、患者さんに自身の体のことを知ってほしい、ということです。
病気はもちろんそうですが、薬を飲む結果、起こる変化も患者さん自身の体で起こることです。その仕組みや変化を事細かく知ることは大変なのでそこまでは必要ないですが、簡単にでもいいので自分の病気がどういうものか、それに対してこの薬をどういった効果を期待して飲むのか、ということは知っておいてほしいと私は思います。
他にも色々ありますが、大きなところはこういった理由でちょっとややこしい説明をすることがあります。なるべくわかりやすいようにと心がけてはいますが、もしわかりにくかったらそれは私の力不足ですので、遠慮せず「ここがわからない」とか「これはなぜなのか」など些細なことでも良いので聞いていただければと思います。
風邪のように治すことができ、治れば元通りになるものならいいのですが、悲しいことに多くの病気は長い治療が必要だったり、治った後にも後遺症と付き合っていかなければならなかったりするものです。
だからこそご自身の体のことを知り、上手に療養生活を送っていただければと思います。