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老衰というもの(その2)

    前回は老衰の定義を説明したところで終わってしまいましたが、あれだけでは言葉ではどんなものかわかっても、体でどういうことが起こっているのかイメージがしにくいと思うので、例え話をしつつ説明していきます。

    回転するコマを想像してみてください。コマは人間で、回転している状態が生きている状態と考えてみましょう。ここでいうホメオスタシスは回転を続けさせる力になります。病気や怪我は外からコマを叩いたりして傾けるようなものと思ってください。小さな傾きであれば回転する力でコマはまたまっすぐに戻ることができますが、大きな傾きだとコマは元に戻れずに倒れて止まってしまいます。多くの場合、若く元気な頃はこのコマを回転させる力が強いので大きな病気や怪我があっても、なんとか持ち直せることもあります。しかし年齢を重ねていくとこの回転させる力が弱まってきます。そうなると同じような病気や怪我でもそのまま倒れてしまいやすいわけです。これが高齢者では軽い肺炎や風邪でも命にかかわる場合があるということの理由です。
    さて、ではこのコマの例えにおいて老衰とは何かというと、自然にゆっくりとコマの回転が止まるような状況です。外部から影響を受けたわけではないけれど、回転させる力が徐々に弱まってきて、そのまま止まってしまう、これが老衰です。

    例え話で老衰がどういう点で病気と違うのかをイメージしてもらえたかと思いますが、ここに合わせて老衰で起こる変化も考えてみましょう。
    コマが回転している状態を生きている状態と思ってください、と言いましたが、生きている状態とはなんでしょう。ここでは難しい話ではなく生きるために必要な活動を挙げてみます。それは睡眠、食事、排泄などです。他にも必要なことはたくさんあるでしょうが、単純に肉体的な部分ではこれらが少なくとも必要というのは明らかだと思います。
    そう考えるとホメオスタシスは睡眠、食事、排泄を維持していく力とも言えるわけです。逆に老衰的な変化ではホメオスタシスが崩れていくためにこれらの活動が弱まってきます。
    なお食事や排泄は減りますが、睡眠は増えます。これは起きているのが難しくなってくるとも言えますし、ホメオスタシスが弱るために睡眠時間がたくさん必要になるとも捉えていいと思います。
    まとめると、眠る時間が増えて、食事や排泄の回数や量が減ってくる、というのが典型的な老衰の変化です。
    とはいえこれらの変化はゆっくりしたものであることが多いです。例えば、日頃から様子をご存じのご家族から見て以前に比べて眠る時間が増えた気がすると思える程度から始まるようなこともあります。もっとわかりやすく症状に表れる場合もありますが、基本的にはそうした小さな変化が少しずつ増えてきて、最終的には老衰となるわけです。

    今回は病気と老衰の違い、また老衰で起きてくる変化で多いものについて説明しました。あくまで典型的な場合の話なので例外もありますが、参考にはなると思います。
    次回はより実際の場における老衰について説明しようと思います。