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患者さんとの間で大切なこと

    今日はクリニックとしてもそうですし、そこで働く医師として私が大事にしていることを書きたいと思います。

    結論から言うと信頼関係が一番大事だと思っています。
    言葉では簡単ですが現実では難しいものです。信頼とはどういうものか、どうそれを作っていくのか。私もまだ完璧な正解というものにはたどり着けていないと思いますが、現時点で思っていることを書いてみます。

    患者さんからの信頼は色々な形があると思いますが、そもそも基本的に患者さんにとって、医師は初対面から重要な部分を預ける相手であるという部分が大きな要素だと思います。
    例えば風邪くらいなら、とりあえず薬がもらえればいいや、といった気持ちで受診もできるかもしれませんが、命にかかわる病気や自分の今後の人生に関わる病気などでも多くの場合には初対面の人間に頼ることになるわけです。そしてこのことは改めて考えてみればかなり不自然なことで、普通に考えれば大事なことほど自分の信頼できる人に頼る場合が多いはずです。
    とはいえより高度であればあるほど医療というのは専門性が必要なので、日頃から関係性をもった医師に診てもらうというのは少ないものです。そこで多くの人は病院などを目安にして、この病院なら安心だ、と思ったりして受診しているのかなと思います。それでもやはり最初は信頼関係がないのは変わりません。つまり信頼関係を築く流れとしては治療と並行して生まれてくる、というのが実際だと思います。
    そしてこれは在宅医療でも同じです。

    信頼関係がなぜ大事なのかということですが、それが治療をより良いものにするために必要だからです。
    やはり信頼できるからこそ話せることが人間にはあると思います。医師と患者さんの間でもそれは同じで、言うほどでもないけれど最近変わったことや気になっていること、医師に言うべきことなのか悩ましいこと、そういうものを信頼関係のない相手にはなかなか言いにくいものです。ですが、そういった話の中に重要な情報がある場合もありますし、それ自体はやはり何か問題がある話ではなくても、その積み重ねがその後の変化を読み取るのに役立つことがあったりします。
    あとは少し面白い話でプラセボ効果の話があります。偽薬でも気持ちの問題で効果があったりするという話です。これ自体は様々な部分で存在することなのですが、例えば痛みやかゆみなど感覚的な症状に対しては大体30~40%ほどの人が偽薬でも効果があったと思うようですし、本物の薬でも同じものを看護師さんと医師が渡すのを比較すると医師が渡す方がよく効いたというデータがあったりもします。このあたりは恐らく患者さんが「これは効くぞ」とどれくらい思っているかによる影響だと思います。逆に私の経験上でしかないですが、「こんな副作用が出るかもしれない」や「効くわけない」と思っている人が薬を飲むと本当にそうなる(そう感じてしまう)確率が高いように思います。ということは信頼していない医師から処方される薬より、信頼している医師から処方される薬の方がきっとよく効く(と感じる)ことが多いはずです。そんな意味でも信頼関係というのは治療に有効と言えるわけです。

    比較的高い頻度で患者さんは医師に何かを伝えるのをためらっているような印象を私は持っています。それは信頼していないというだけでなく、遠慮だったりもするのでしょう。ただそこを超えて気軽に相談できるような信頼を築くことを目指しています。説明されたとしても、初めての薬を飲むことや何かの治療をすることはやはり不安があることです。そんな不安を少しでもやわらげる要素が信頼関係というものなのだと思いますし、そういった不安が良い治療を継続していく障害となるので、それを解消する意味でも私は信頼関係を重視しています。
    特に在宅医療では安心感というのが大事になるので、当たり前ですが、信頼できる医療者が診てくれているというのが安心感につながる要素として重要に感じます。