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年齢と記憶力の関係は・・・
今月のスタッフブログ担当は看護部です。
私、萩野(はぎの)は4月からクリニックの看護師として働いています。
水曜と金曜日の訪問なので、まだお会いしていない患者さん、ご家族、関係者の方々もいらっしゃるかもしれませんが、これからどうぞよろしくお願いいたします。
「年をとると記憶力が衰える」とよく聞きますが、実際はいかがでしょうか?
そのように実感していらっしゃいますか?
私も脳については、不思議で分からないことが大半であるにもかかわらず、この俗説の通りだと思っていました。
ですが、私が以前から好きで愛読している本が何冊か家にある、脳科学者の池谷裕二さんは、解剖学的知見からは記憶力は経年劣化しないという反対の立場をとられています。
認知症などの脳疾患は別として、脳の神経細胞数は、3歳から100歳までほとんど変化がないことが報告されているようです。
驚きですね。人の「年をとったら・・・なるだろう」という情報が、自分が記憶力が衰えているという思い込みになって、ダメな自分を自分で創っているとしたら・・・。
私の祖母は、94歳で逝去しましたが、生前毎日のように日記をつけていました。
島根の田舎で祖父が亡くなった後、20年1人で暮らしていました。
太陽が昇る頃に起き、草を刈り、畑を耕し、近所の人たちや郵便、宅配の人にもお茶やお菓子を出してしゃべり、手を振り、そんな祖母の当たり前にある毎日の中でその日あったことを記していました。
日記を見ずとも、それを思い返しては電話でよく話してくれました。
孫の私の誕生日は1度たりとも忘れたことはなく、2人のひ孫の誕生日にも必ず手紙とお祝いを送ってくれていました。
祖母は私よりずっと、自分の生活に必要なことを細やかに記憶しており、丁寧な毎日を送っていました。
記憶は必要な情報を入力するとともに、過去の記憶を忘却していくことで「今」という時間の流れを感じることができます。
過去が鮮明であれば、時間的距離はなくなり「今」という概念が崩れてしまうのです。
私たちはこの情報社会で、過剰すぎる情報を取り込みながら生きています。
祖母の暮らしを思い起こすと、在るものを必要なだけ取り込み、一日一日を振り返り丁寧に生きることで、年齢に関係なく人間らしく生きれるのではないかと思います。
一方で、現代社会ですべての情報をシャットアウトして、生活を一変することが良いことかと言われると、そうとは言い切れません。
これからの社会では、日々進化する情報技術と上手に付き合っていくこともまた必要と思っています。
溢れる情報に流されず、選別をしながら、時には情報に触れない時間・日をつくっていくことで、脳をぼーっとさせることも大切ですね。
脳は入力より出力に多大なエネルギーを使うそうです。
脳の使い方を入力ばかりに偏らせず、話したり、書いたり、歌ったり、時には衝動のままに絵を描いたり、写真を撮ったりすることも、今を豊かにしてくれるのかもしれません。
(参考文献)池谷裕二(2023).脳は意外とタフである,扶桑社新書.