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学生実習の思い出

    先日、近隣の大学から学生さんが実習に来てくれました。その際にご協力いただいた患者さんとそのご家族にはこの場を借りて再度お礼申し上げます。
    学生時代の実習というのは自分の記憶を辿っても印象深いものですし、患者さん含め多くの人の協力が必要なので、当時私を受け入れてくれた医療機関やそこでの患者さんには今も感謝しています。正直なところ学生実習の段階では、病院などの実務のことはもちろんわからないですし、まだ専門的な知識も万全ではないので、振り返ればこういうことだったんだなとか、もっとこういう部分をしっかり見学すればよかったなとか、後悔することがあります。それでもやはり現場を直接見るというのは大きな経験ですし、そこでの経験が後に活きることも多々あるので、学生時代の経験としてとても価値のあるものだと思います。
    今回当院は初めて学生実習を受け入れたので、なかなか不慣れでいい実習にできたかなと不安ではありますが、今回の実習が価値のある経験になってくれるといいなと願っています。

    さて学生さんに教える立場になって昔の自分の記憶を振り返ったので、そこで思い出したことを書こうと思います。
    実習と一口に言っても、一人の先生について一日を過ごしたり、その科のエッセンスを体験できるように色々な場所を案内してもらったり内容は様々でした。期間も大学によって様々なのかなと思いますが、私の場合は同じ科にひと月ほどいることが多かったです。そのひと月も最初の2週間は大学病院で残り2週間は市中の病院だったり、全部大学病院だったり、科によって違っていました。当時はなかなかそこまで思い至らなかったですが、どのような実習が学生のためになるかというのを考えて計画してくれていたのだなと逆の立場になってよくわかりました。

    そんな学生実習ですが、その中でひとつ、強く思い出されるのは、ある病院の総合内科でひと月実習させてもらった時のことです。実習が始まったころに入院された患者さんがいて、その方を一か月間、担当医の先生と一緒に診断から治療まで勉強させていただきました。幸い実習の終わる1週間ほど前に無事退院されて、最後の一週間はその方の症例レポート(経過を振り返ってより良くできる部分があるかなどを考察するものです)を作って総合内科の先生たちの前で発表させてもらいました。患者さんが元気に退院できたのもよく覚えていますし、発表で先生方に評価していただいたことも覚えていますが、特に覚えているのはその時の担当医の先生の教えてくれたことです。その先生は患者さんにとってはもちろんすごく良い先生で他の患者さんにもよく感謝されていました。さらに仕事の合間には私にも多くのことを教えてくれて、疑問に思ったこと、当時の私の知識だときっとくだらない内容だったであろう質問にも丁寧に答えてくれる優しい先生でした。その先生は医学的な知識はもちろん、診療する際の考え方や医師として持つべき視点についても教えてくれました。そういった教えは今でも私の中で活きているなと思います。

    今はその先生がどこでどう働いておられるか存じ上げないですが、今、私を通してその先生が患者さんのための力になっている部分があると思うと、人の営みとはこういうものか、となんだか不思議な気持ちになりました。こういうことも医師としてできることのひとつなんだなと実感しましたので、今後もできる限りは学生さんの実習を手伝いたいと考えています。その際にはまた患者さんにもご協力をお願いすることもあるかと思いますが、未来の患者さんたちのためと思ってご協力いただけると幸いです。